環境と開発に関するリオ・デ・ジャネイロ宣言

国連環境開発会議より

これは環境問題が他の諸問題と深くリンクしていることを示すものだが,とりわけ,従来相反するものとして考えられ,先進国と開発途上国の対立のもとともなっていた環境と開発とについて,それはむしろ互いに依存するものであり,環境を保全してこそ将来にわたる開発が可能となるという主張(持続可能な開発)を説得的に打ち出すものであった。

 

地球サミットは,この考え方をキー概念として,〈環境と開発に関するリオ・デ・ジャネイロ宣言(リオ宣言)〉,その具体的な行動計画たる〈アジェンダ21〉,また〈森林原則声明〉を採択したほか,地球温暖化防止条約(気候変動枠組条約),生物多様性条約の調印がこの会議でなされた。

 

リオ宣言は持続可能な開発を実現する諸原則を規定しているが,特徴的なのは,その実現に向けてすべての主体の参加と情報公開がうたわれ(第10原則),女性,青年,先住民,抑圧下の人間等,各主体の関与,役割を明らかにしている点(第20~23原則),また,〈共通だが差異のある原則〉(第7原則)という考え方を打ち出している点である。
※「リオ宣言」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について

[序文]

  

国連環境開発会議は1992年6月3日から14日までリオデジャネイロで開催され、1972年6月16日の国連人間環境会議で採択されたストックホルム宣言を再確認するとともに、その発展を目指し、社会や市民のかなめとなる分野と各国間の新たな水準の協調の創造を通じて、新しく公平な地球規模の協力関係の確立を目標とし、すべての権利を尊重するとともに、地球の環境と開発システムの一体性の保全への国際的な合意を追求し、われらの住まいである地球が不可分なものであり相互に依存することを再認識し、次の諸原則を宣言する。

[第一原則]

  

人類は持続可能な開発に対する関心の中心にある。人類は自然と調和して健康で生産的な生活を送る権利がある。

[第二原則]

  

国家は国連憲章と国際法の原則に従い、自らの環境と開発の政策に準じて自国の資源を開発する主権的権利と、自ら管轄または支配する行動がほかの国や自らの管轄権の及ばない地域への環境破壊を起こさないようにする責任を有する。

[第三原則]

  

開発の権利は、現在および将来の世代の開発と環境での必要性を公平に満たすよう行使されなければならない。

[第四原則]

  

持続可能な開発を達成するために、環境の保護は開発過程の欠くことのできない部分とならなければならず、それから離れて検討することはできない。

[第五原則]

  

生活水準の格差を縮小し、世界の大部分の人々の必要性をより良く満たすため、すべての国家、国民は持続可能な開発に必要不可欠な要求として、貧困を根絶する重要な任務に協力しなければならない。

[第六原則]

  

発展途上国、特に最も開発が進んでおらず最も環境的にぜい弱な国々の特別の状況と必要性には、特段の優先順位が与えられるべきである。環境、開発の分野での国際的な行動は、すべての国の利益と必要性に向けて取られるべきである。

[第七原則]

  

各国は地球の生態系の健全性および完全性を保全、保護、復元するために全地球的に協力する精神で協力しなければならない。地球環境の悪化への関与はそれぞれ異なることから、各国は普遍的だが異なった責任を持つ。先進諸国は、彼らの社会が地球環境にかけている圧力および支配している技術、財源の観点から、持続可能な開発を国際的に追求する上で有している責任を認識する。

[第八原則]

  

全人類が持続可能な開発とより高度な生活水準を達成するために、各国は持続不可能なパターンの生産と消費を縮小、廃止し、適切な人口政策を推進すべきである。

[第九原則]

  

各国は、科学と技術の知識の交換を通じた科学的認識の向上と、革新技術を含む技術の開発、適用、普及、移転を強化することによって、持続可能な開発に向けた内なる能力のために協力すべきである。

[第十原則]

  

環境問題は関心あるすべての市民が適時、参加することで、最も良く対処される。国内のレベルでは、個々人は、危険物質や地域社会の活動を含む公共機関が持っている環境関係の情報を適切に入手し、政策決定に参加できる機会を得なければならない。国家は情報を広く公開し、国民の認識と参加を促進、奨励しなければならない。賠償や救済を含む、司法や行政手続きへの効果的な参加が与えられるべきである。

[第十一原則]

  

各国は効果的な環境法を制定しなければならない。環境基準、規制対象、優先順位は、適用する環境と開発の状況を反映しなければならない。幾つかの国で適用される基準は別の国々、特に発展途上国では不適当で、不当な経済的、社会的費用をもたらすかもしれない。

[第十二原則]

  

各国は、環境悪化問題へのより良い対処と、すべての国に経済成長と持続可能な開発をもたらすような、有効で国際的に開かれた経済システムを促進するため、協力しなければならない。環境目的の貿易政策は、し意的な、または正当化できない差別、偽装した国際貿易の制限の手段とされるべきではない。輸入国の司法権の外での環境問題に対する一方的な行動は避けるべきである。国境を越える、または地球規模での環境問題への対処は、可能な限り国際合意に基づくべきである。

[第十三原則]

  

各国は汚染被害者やほかの環境被害の犠牲者に対する責任と補償に関する国内法を作成しなければならない。各国はまた将来、自国の管轄権の及ばない地域で、自国の管轄下あるいは支配下による行動が起こした環境被害の影響に対する責任と補償に関する国際法を作成するため、迅速でより断固とした姿勢で協力しなければならない。

[第十四原則]

  

各国は深刻な環境破壊をもたらすか、人間の健康に害があることが判明した、いかなる活動、物質の他国への移転を思いとどませたり、防止するため効果的に協力すべきである。

[第十五原則]

  

環境を防御するため各国はその能力に応じて予防的方策を広く講じなければならない。重大あるいは取り返しのつかない損害の恐れがあるところでは十分な科学的確実性がないことを、環境悪化を防ぐ費用対効果の高い対策を引き延ばす理由にしてはならない。

[第十六原則]

  

各国政府は、環境の汚染者は原則的に汚染の費用を支払うことを考慮に入れ、公衆の利益を配慮するとともに、国際貿易と投資をゆがめることがないよう、環境にかかる費用の国際化と経済手段の使用促進に努力すべきである。

[第十七原則]

  

国の手段としての環境影響評価は、環境に明白な悪影響を及ぼしかねない対象について行わなければならず、権威ある国家機関の決定の対象とすべきである。

[第十八原則]

  

各国はほかの国に突発的で有害な影響をもたらしかねない、あらゆる自然災害や緊急事態について、それらの国に直ちに通報しなければならない。被害を受けた国を支援するため、国際社会によるあらゆる努力がなされるべきである。

[第十九原則]

  

各国は国境を越えて重大な環境への悪影響をもたらしかねない活動について、潜在的に影響を受ける国に対し、事前に適切な通報をするとともに、的確な情報を提供しなければならず、初期の段階でそれらの国と誠実に相談しなければならない。

[第二十原則]

  

女性は環境の管理と開発に極めて重要な役割を有する。彼女らの全面的な参加はそれゆえ、持続可能な開発を達成するうえで欠くことができない。

[第二十一原則]

  

すべての人に持続可能な開発とより良い未来を保障するために、世界の青年たちの創造力、理念、勇気が、地球規模のパートナーショップ創造に向けて動員されるべきである。

[第二十二原則]

  

先住民とその社会、さらに地域社会は、彼らの知識と伝統ゆえに環境の管理と開発に重要な役割を有する。各国は彼らの主体性、文化、利益を認め、正当に支持し、持続可能な開発を達成するために彼らの効果的な参加を可能とすべきである。

[第二十三原則]

  

圧政、抑圧、占領下にある人々の環境および天然資源は保護されなければならない。

[第二十四原則]

  

戦争は本質的に持続可能な開発の破壊者である。それゆえ各国は交戦時における環境保護の国際法を尊重し、必要に応じて、その一層の発展に協力しなければならない。

[第二十五原則]

  

平和、開発、環境保護は相互に依存しており、不可分のものである。

[第二十六原則]

  

各国はすべての環境に関する抗争を平和的かつ国連憲章に従って、適切な手段で解決しなければならない。

[第二十七原則]

  

各国および国民は、この宣言に具体化された原則を満たすとともに、持続可能な開発の分野での国際法の一層の発展のために、誠意を持って、パートナーショップの精神で協力しなければならない。